石川には発酵食品が生まれる必然性があった

能登半島の入り口に当たる所に、連れ合いの実家がある為、
子供たちが小さい時には、盆暮れの折に帰省したものです。

 

車での道中でも、2〜3日の滞在中にも、
必ずと言っていいほど雨に合います。
夏の雨の降り方の激しさと、
濃いグレーの世界の中で、激しい波が作り出す白いしぶきが
海と空との境を示している景色が、印象的に残っています。

 

そんな、ちょっとした触れ合いの中からも感じ取れる能登の湿度の高さは、
発酵食品を生み出すカビにとって好条件になります。

 

 

冬場は、積もることは少ないようですが降雪が多く、
海風と相まってか、気温の低さは尋常ではありません。
漁のできない時期の食料を確保するために、保存食をあみ出す必要性にも迫られます。
幸い、夏もクーラーが要らないくらいの気候は、
保存食の保存にも適しています。

 

 

自動車も電車も存在しない昔、物資の輸送は海上を利用していました。
地元で獲れる海産物の他にも、
北海道からのフグやニシンなどの塩蔵魚が陸揚げされていた習慣もあり、
加えて、水が良く、“米所”でもあるとなれば、
ここ、能登の地での発酵食品は、生まれるべくして生まれたと言えるのではないでしょうか!

 

 

発酵食品は、微生物(乳酸菌、酵母等)が持つ酵素の働きで
米、大豆、魚などの食材を発酵させて作る食品です。

 

米に注目すると、日本酒の醸造がまず思い浮かびます。
寒い地であることを考えると、身体を温める効果が期待できます。
また、糠や粕が発酵源になり、様々な食材を漬けて発酵食を作り出します。
中でも『フグの糠漬け』は、石川県だけが作ることを許されている発酵食で、
その技術力の高さにも特筆すべき価値があるようです。

 

 

豊富に集まってくる魚介類を利用して、
『いしる』と呼ばれる魚醤が作られ利用されています。
独特の旨みを持つ発酵調味料は、他の食材との出会いで、
発酵食品のレパートリーを広げてくれます。

 

 

また、日本特有の微生物に麹菌があり、
日本酒から味噌、醤油、酢等、日本の食文化の基礎を支えています。
金沢名物の『かぶらずし』は、ブリを挟んだカブを麹漬けしたものです。

 

 

そんな思いを巡らせば、石川は発酵食品の生まれる土壌があり、
受け継ぎ、育ててきた歴史が、今も厳然と繋がっていると言えそうです。